硝子の花片
「今、何年ですか??」

私が聞くと、その人は少し驚いたように目を見開いたが、すぐに微笑んで答えてくれた。

「今は元治元年の3月ですよ。」

元治元年…げんじがんねん…
確かに江戸時代末期の年号だ。そう、新撰組がいた時代。瑞奈が言っていた。

(こういう時に瑞奈の知識は使えるんだなぁ…。)
と、呑気な事を考えている場合ではない。

…時代が違うのだ。生きている時代が。

私が先程まで居た時代と、元治元年とでは約150年の隔たりがある。

一瞬にして場所どころか時代を飛び越えるだなんて、現実的には考えられないのだ。
タダでさえ、タイムスリップなんて、光速より速い乗り物がないと出来ないとかなんとか言われているというのに…

どうしたらいい?

考えるけど解決策が見つからない。
帰る術もなく、ここで生きていく術も持ち合わせてはいない…

「あのう、大丈夫ですか?顔色が悪いですよ。」

いつの間にか身を屈めて私の顔を心配そうに覗く綺麗な人が目の前に居た。

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