君が眠る時には

俺?


自分の名前が不意に聞こえて、反射的に立ち止まった。

「もう移植出来ないんだってね。まだ若いのにかわいそう…」


……え。


今、なんて言った?


聞き間違いか?


移植が出来ない?


嘘だろ……。


看護師の言った言葉が信じられなかった。


どこがダメだったって言うんだよ。


俺はこのとおりピンピンしてるんだ。


おかしいだろ……。


「私これからどんな顔して葵くんに接したらいいかわからなくて…」


俺だって、雪とどんな顔して話せばいいかわかんねぇよ…。


こぼれそうな涙を抑えながら病室に戻った。



どう、なるんだろうか……。



俺はもう、長くは生きていられないのか。


首を触って自分の脈を確かめた。


ちゃんと動いてる。


動いてるのに…。


この動きが、いつか止まってしまうんだ。



こんなふうに、病気が進行してることに気づかずに、いつの間にかころっと死んでいるのかな…。
< 73 / 187 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop