君が眠る時には
俺?
自分の名前が不意に聞こえて、反射的に立ち止まった。
「もう移植出来ないんだってね。まだ若いのにかわいそう…」
……え。
今、なんて言った?
聞き間違いか?
移植が出来ない?
嘘だろ……。
看護師の言った言葉が信じられなかった。
どこがダメだったって言うんだよ。
俺はこのとおりピンピンしてるんだ。
おかしいだろ……。
「私これからどんな顔して葵くんに接したらいいかわからなくて…」
俺だって、雪とどんな顔して話せばいいかわかんねぇよ…。
こぼれそうな涙を抑えながら病室に戻った。
どう、なるんだろうか……。
俺はもう、長くは生きていられないのか。
首を触って自分の脈を確かめた。
ちゃんと動いてる。
動いてるのに…。
この動きが、いつか止まってしまうんだ。
こんなふうに、病気が進行してることに気づかずに、いつの間にかころっと死んでいるのかな…。