君が眠る時には

そう考えた時に、死ぬ前に雪にこの想いを伝えたいと思った。


いや、できることなら今すぐあいつに好きだと伝えたい。


でも……。


できないんだ。


それだと、あいつが困るから。


もうすぐ死ぬやつから好意を向けられても、重いだけだよな。


それに俺が死んだ後、俺のことが気にかかって恋が出来なくなったらって考えると……。


雪の人生を台無しにする権利は俺にはない。


あいつが恋することが出来なくなったとして、俺はそれでもいい。


ずっと俺のことだけを見ていてほしい。


ずっと忘れないでいてほしい。


でも…そんなのは俺のわがままだ。


雪に押し付けていいものじゃない。


あいつはもう俺といたらダメなんだ。

今まで苦労しながらなんとか生き続けてきた雪に、これ以上何を背負わせるというのだろう。

必要以上の悲しみを、背負う必要は無い。


…………雪を突き放す。


俺はそう決意して雪が病室に来るのを待った。



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