はちみつドロップス
実力テストも終わり、放課後のグラウンドにはまた、いつもの活気が戻っていた。



それを遠くに聞きながら、夕暮れの廊下で物思いに耽る影が一つ。



昨日と同じ廊下で、ぼんやりと外を眺めていた涼希は、ついさっきの出来事を思い出していた。



「どうしたの? 元気無いじゃん」


「珍しく」



いつも使っているドラム型の小さなスポーツバッグを取っ手の片方だげ掛け、廊下を歩いていた涼希は無意識のうちにため息を漏らしていた。



そこへ偶然にも出会したのが、皇楽と天だった。


少し心配そうに自分の顔を覗き込んでくれる天に、かつて抱いていた恋心をにわかに思い出した。



「心配してくれるんッスか? 天さん?」


不自然にならない程度の間を置いて、いつものように軽口を叩いてみせる。



「とうとう俺の所、来る気になりました?」


「……元気そうだな」

「ため息ついてたからどうしたのかと思ったら」


揃って呆れ顔を浮かべた二人に、ハハハっと笑って見せた顔はいつも通り。



なのに、今まで皇楽と居る天を見て感じていた物足りなさは感じない。

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