はちみつドロップス
いつもと同じ淡々とした口調なのに、椎菜の名前を口にする度に修護の声は柔らかさを増していく。



それに相槌を打ちながら、天が分量の砂糖を加えていく。




「椎菜の両親が忙しい人だから、椎菜はよく庭の垣根に居たんです」




そこへ修護が持って行ったのが、母親と作った手作りのお菓子だった。



「今はあんな、ぶりっこで女子を敵に回すようなヤツですけど……お菓子食べてるときの椎菜は良い顔で笑うんです」



木ベラでクリームチーズと砂糖を混ぜ合わせながら、修護の鉄仮面は優しく笑みを漏らした。



それににっこりと笑いかけた天が嬉しそうに頷き、修護は照れくさそうに小さく笑う。



なんだか良い雰囲気の二人を前に、メレンゲを泡立てていた皇楽の手に必要以上に力が込められた。



その背中からは、ピリピリとしたオーラが遠慮なく放出されている。



「高原くん……顔怖い」


「自分が椎菜とのことで高宮をヤキモキさせてたってこと、今すごーく実感してるだけだよ」




そうとは知らず、通常の倍は早く泡立ったメレンゲに天と修護は手放しに喜んでいた。
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