暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
私の近くにいたファン宰相様は陛下の言葉に軽く頷くと、
「陛下がそう言うのであれば私から言うことなど特にございません。ですが、取りあえず周りにはお妃様は療養に出かけたとでも話しておきましょう」
そう言って偽の療養外出書をサラッとその場で作り手渡してくれた。
「これで宮殿の外へ出ても問題ないはずです。皆は療養に行くものだと思うはずなので」
療養書が作成されると使用人にも伝わる形となるので、皆に私が療養に行くものだ思わせる事が出来る半面、宮殿の外でこの国の印が押された療養外出書を見せると、
王族の者だと示す証明書にもなるらしい。
これで周りから変に思われずに外へ出掛けることができる。
「……余も行ってはいけぬの…「いけません。陛下は仕事をしてください」
少しだけ寂しそうな陛下へファン宰相様の鋭い言葉が飛ぶ。
確かに私も実家に戻る間は陛下と会えなくなるので寂しくないと言ったら嘘になるが、
一生会えなくなるわけでもないのでそこまででもない。
用事が済めば直ぐに宮殿へ戻って、また陛下といつものように過ごせば良いのだから。