暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】















「親しい関係にある貴女なら情報を私達に流してくれると信じてました」

スフィア様が連れていかれた後、フィグリネ様の侍女が隠れて会った人物は誰もが予想しないであろう意外な人物であった。

「では約束通り貴女の望みを言ってみなさい。私で出来る事なら叶えましょう」

侍女はその人に向けて怪しい笑みでそう言った。

対するその人は気が重いような暗い雰囲気であったが、その言葉を聞くと顔を上げた。

「本当に……叶えて下さいますか?」

「えぇ。私はこう見えても名家育ちよ。その気になれば人など簡単に動かせるわ」

「………そうですか」

それでも少しためらうような表情にその侍女は『言ってみなさい』と再度促すと、その人は恐る恐る口を開いた。

「………では、私をこの勤めから解放させてくださいませ。私が他国から売り飛ばされた者と知っても尚優しく接してきてくださいましたが、このような事もうしたくありません。本当は元の国に帰りたい……っ」

その人は辛そうな顔をしており、目には涙を溜めていた。

中々口に出すこともないその本音。

今回ばかりはその願いを聞いてほしい。

そう聞こえたが、その侍女には何を通じない。

「何を言っているの?貴女は既にここへ来て10年以上もの月日が経とうとしています。今更母国へ戻ったところで何になるの。家族は皆貴女を忘れ新しい人生を過ごしているというのに(笑)」

「…それでもです。どちらにせよ、私は母国へ戻り新しい人生を送りたいのです」

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