暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
急に両親から引き離され知らない土地にずっと暮らしてきたその人は、いつも心のどこかで戻りたい…とそう願っていた。
だけどその母国がどんだけ離れた土地なのか知る術がなく、分かったとしても砂漠に囲まれた国から知られず抜け出すという事はとても難しい事であった。
だから心の中でいつも願うだけで、口にはしてこなかった。
「…………残念だけどそれだけは私でも無理よ。これには王子様も関する事であるから、仮に逃がしたとしても最終的には捕まり罰が下る。二人ともね。だから他のにして頂戴。明日までで良いから」
返ってきた言葉は願いを打ち砕くようなもので、この先もここから出れないとそう言われているようであった。
死ぬまでここで、この土地で暮らさないといけないという絶望と、今まで抱いていた希望が一気に消えていく感覚がする。
その人は帰っていく侍女の後ろ姿を眺めながらそう思った。