暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
後ろを振り返ると兵士と侍女の間を遮るように、なぜかギャビンが立っていた。
「何をしておる」
余も思わず声をかけるが、余の声であってもギャビンはその場から動かない。
そしてその侍女を見つめながらゆっくりと口を開いた。
「もしや君………名前にギャビンが付かないか?」
変な事を言い出したと思いつつ見ていると、その侍女は目を見開き驚いたように『え?』と口を開いた。
まぁ確かにいきなり変な事を口に出されたら流石に相手も驚くかと思ったが、そんな感じではなかった。
「知らないはずなのに、どうしてその名を知っているのですか……?」
「……やっぱりか。いや、君の声を町で聞いていてね、もしかしたらと思ったんだ。ある子が君の事をギャビンと言っていたのを覚えていたもので」
「町………となると、先ほどチベットさんと出かけたときですね。まさか声を覚えられていたとは思っていませんでした」
そう言って相手は苦笑する。
確かに女性の声だけで本人と一致するのは凄くもあり、気味が悪くもある。
当たり前の反応か。
流石に傷ついたのではないかと思って見てみたが、そんなものではなくとても深刻そうな表情をしていた。