暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
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「お妃様…………今何とおっしゃいましたか?」
村へ到着する前に私はクレハへ向かって"あるお願い"をした。
「宮殿へ戻るまでは私の事をお妃様と呼ばないでほしいの」
お妃様と言ってしまえば先ず変な顔をされるのは目に見えているし、もしこの村まで妃は黒髪などと知れていた場合言い訳が厄介だからだ。
「……失礼ですがそのような事私(わたくし)には出来ません。お妃様へそのような口を聞くなど、罪になります」
流石にクレハはそうは出来ないと言い切るのだが…………それだと私も困る事がある。
「どうかお願い……今回だけそうしてくれないかしら?私が許可するのだから、心配しなくとも罪にはならないわ!」
どこまでも真面目なのかクレハは決して自分の意見を曲げる事はなく、
これでは確実に家族の前でお妃様と呼んでしまいそうだ。
どうにかして…………………………クレハに『お妃様』以外の名を呼んでもらいたいのだけど。
私は横に並び歩きながらどうしたら良いのか考えてみると、ある策を思いついた。
いや……………策と言うか私が持つ特権か。
「クレハ」
「……何でしょう?」
「これは"命令"よ。私をお妃様以外の名で呼びなさい」
妃の命令とあれば拒否する事は出来ないだろう。