暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
*
朝食も済み、頭がしっかりと覚めてきた頃。
―――コンコンコン。
「第二騎士団団長のクレハ・アリス・エラストマーです。お妃様にお会いしたく参りました」
部屋に訪れたのはクレハだった。
「どうぞ」
「失礼致します」
――ガチャ。
ドアを開けて入ってくるクレハの顔色は以前と変わりがなく、その姿にホッと安心する。
「宮殿に戻ってきてからこうしてクレハと顔を合わせるのは、何だか久しぶりな気がするわ」
帰ってきてからは私もクレハも忙しく、クレハに関しては第二騎士団の仕事と事件その後の処理、そして何より心配していたのは………陛下から下される処罰だった。
私の勝手な行動でクレハには王族を危険に晒したという罪を課せられるかもしれないと、私付きのメイドから話を聞いた。
あれは私が勝手に動いて勝手に危険な目にあっただけであり、クレハは何も関係ないのに処罰を受けるかもしれないなんて……とても怖かった。
陛下にはその後クレハに罰を与えないようにこちらからお願いしたけれど……実際に判決するのは陛下。
私ではない。
最悪死刑も考えられるそんな宮殿の刑罰に私は何て勝手な行動をしたんだろうと、後で悔いもしたけれど……クレハが無事でよかった。
「顔を出すのが遅くなり申し訳ございませんでした」
「そんなのは良いから気にしないで?クレハが無事でよかったわ。それでクレハは私に何か用事でもあったのかしら?」
何もないのに顔だけ出すのはクレハにしては何だか珍しい気がする。
だから何か用事でもあったのかなっと思ったのだけど……。