暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
そう笑って見せるので、せっかく誘って頂いた事だし会議が終わるまでの間、ファン宰相様とお茶をする事にした。
客間の一室を借り用意された紅茶をファン宰相様と楽しむ。
陛下と一緒の時に話した事は何度かあるけれど、このように一対一でお話するのはあの日以来な気がする。
私が陛下の命令でパーティーに参加する事になった時。
社交ダンスの練習のお相手を一度してもらった事があった。
それから宰相様とはあまり話していない。
あの時はただの客人だったから、自ら話しかけに行くのも気が引けたし………今も何となく無自覚に遠慮してるのかしら。
そんなわけないとは思うけれど……。
「浮かない表情をされておられますが、詰まらなくさせてしまいましたでしょうか?」
考え込む私にファン宰相様は申し訳なさそうな顔をしたので、
「い、いえ…!とても楽しいです。気になさらないで」
急いで訂正を入れる。
するとファン宰相様はホッとしたように、先程とは違う話をふってきた。
「しかし………驚きました。幼少期の陛下を私は知っておりますが、そのお方がまさか人を好きになるとは思いませんでした」
「それは一体……どう言った意味ですか?」
その言葉の意味が分からず、思わず聞き返すと
「私の口から色々とは申し上げれませんが、陛下が強い理由の背景には様々な苦労や辛い記憶にあるものなのですよ。冷めきった陛下のお心を動かされてのは紛れもなくお妃様です」
「私が…………ですか?」
「えぇ。少なくとも私はそう思っております」
ファン宰相様はそれだけ言うとニコッと私に微笑む。
その陛下の過去に触れてみたい……と思ってしまったけれど、そのファン宰相の笑顔はこれ以上は答えれないと言ったような表情だった。