たとえ、この恋が罪だとしても。


「お邪魔します~」

一人が通れるぐらいの小さな玄関で靴を脱ぐと、真っ直ぐ続く廊下を歩き、一番奥の部屋のドアを開けた。


うわ…

ドアを開けると、車の中と同じでタバコの匂いが少しする。
そして、いかにも男の一人暮らしという感じの部屋。

部屋の真ん中に置いてある机の上には、灰皿と飲みかけのペットボトルのお茶に、数十枚のプリントが散乱している。

窓際には洗濯ものが干してあり、昨日山崎先生が来ていたスーツもかけてある。

「へぇー…男の人の部屋ってこんな感じなのか」

光太郎とお兄ちゃんの部屋とはまた違う、大人の男の人の部屋って感じ…


部屋のドアの前で、キョロキョロと中を見渡しているとー…


「あんま見るなよ、恥ずかしいから」

背後から声がし、山崎先生が戻ってきた。

「今、片付るから少し待ってろ」

そう言うと、山崎先生は先に部屋に入りテーブルの上を片付け始めた。

「車の中でも思ったけど、山崎先生ってタバコ吸うんですね」

片付けをしている山崎先生の姿を見ながら聞いた。

学校で山崎先生から、タバコの匂いがしたことはない。

「今、うるさいからな。学校では吸わないし、なるべく出勤前にも吸わないようにしてるから」

片付けながら、山崎先生は答えた。

「へぇー…」

山崎先生って確か、うちの親と同じぐらいの年齢だったよね?
独身って噂は流れてたけど、この部屋の中を見ると彼女もいなさそう…


「お前…声に出てるぞ」

「…え!?」

片付けを中断し、苦笑いをした山崎先生と目が合った。

「悪かったな、この歳で独身で。彼女もいなくて」

ジロリと睨まれながら言われた。

「あはは…すいません」

やば…声に出てたんだー…







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