たとえ、この恋が罪だとしても。
「え…あぁ…そうだよな。悪い」
白衣を着た先生らしき人は、気まずそうに目を逸らすと体育館とは反対方向の校舎に向かって行ってしまった。
何…?
他の生徒と間違えたの?
でも、真美って呼び捨てだったしー…
なぜそう呼ばれたのか、意味がわからない。
そんなことを考えているとー…
「真優」
「!」
ポンっと背後から、頭を何かで叩かれた。
驚いて振り返ると、そこにいたのはー…
「お兄ちゃん!?」
思わず出てしまった大きな声。
「入学式、そろそろ始まるぞ」
呆れ顔をしたお兄ちゃんが立っていた。
「光太郎は?」
「あ…トイレに行くって」
突然の登場に、言葉がうまく出ない。
こんなに早く、学校でお兄ちゃんに会えるなんてー…
嬉しさ半分、まだ驚いてドキドキしている。
「ふーん。まぁ、いいか。行くぞ」
体育館に向かって歩き出した、お兄ちゃん。
「え…行くぞって?」
「体育館に決まってんだろ?もう入学式始まるし、俺も在校生代表で祝辞読むし」
「え!?」
さっきよりもさらに、大きな声が出てしまった。
「声がでかい。置いてくぞ」
「あ…待ってよ!」
どんどん体育館に向かって歩いて行ってしまう兄の後を、慌てて追う。
そっか…お兄ちゃんも入学式でるんだ。
だったら先に行かずに、一緒に登校してくれてもいいのにー…
3歩前を歩く、兄の大きな背中を見ながらそう思った。