黒豹プリンスと傷だらけのプリンセス
その部屋の入口では、衛兵達が厳重に警備をしいていた。

レオパードが片手を上げると、その衛兵達はまるで平伏すように入口の前の警備を解いた。

そんな様子から私は、出会ってから今まで、いつでも普通に話していた彼が本当にこの国のプリンスだということを実感して。

何だか、不思議な気持ちになったのだった。



パンターの国宝……赤い宝玉はその部屋の中央で、まるでガラスのような透明な物質で囲われていて。

それを見た私は、思わず目を見張った。


「うそ! すごい、綺麗……」


暗い部屋の中で真っ赤に光るそれは、まるで吸い込まれそうなほどに澄んで美しかった。

それは、巨大なルビー……いや、それよりも綺麗で神々しいほどの輝きを放っていて。

生命を司る神を召喚する宝玉の一つだ、という信じられないような話に不思議な説得力を持たせるものだった。




「ねぇ、レオパード……」


私はその宝玉を見ながら、恐る恐る口を開いた。


「ウルフの血族は……これを手に入れるために、この国やアルビンに侵略しようとしているの?」


宝玉の話を聞いて、ふと浮かんだその疑問……

宝玉の実物を見たことで、私の中ではそれがほぼ確信に変わっていた。
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