*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
「私は杏ちゃんにとって頼りにならないのかしら……」
それまで真摯に私を見つめていた瞳が急に細められ、悲しそうに眉が下がる。
私は思わず焦った。
「そっ、そんなことありませんっ!!千紗子さんは私にとっては本当に頼りになる先輩ですっ!」
「そうだと良いと思っていたんだけど…杏ちゃん、ちっとも私のことを頼ってくれないんだもの。口では何ともいえるものね……」
「やっ、それは違くて…あの、私にとっては一大事でも、他の人には取るに足りないことだし…そんなことで、お休みの日の千紗子さんの手間をかけるようなことは……」
「―――取るに足らないこと…ね。」
「……はい、だから、あの…」
「じゃあ、大丈夫。取るに足らない些細なことなら、手間なんかかからないわ。何でも言って?」
さっきまでの困ったような悲しげな顔が嘘だったみたいに、急に眉を跳ね上げ、私を見据えるように目を細めた。
(あっ、仕事の時に叱られる時と一緒だ……)
新人の時に初めて遭遇してからというもの、今ではごくたま~~にしか見ることのないその表情(かお)をした彼女に、これ以上逆らってはいけないことを私は経験上知っている。
ゴクンと生唾を飲みこんで、覚悟を決めた時
「諦めた方が良い。こうなった千紗子に敵う人はいないよ。」
リビングのドアがガチャリと開く音と一緒に、楽しげなバリトンボイスが聞こえた。