*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
「雨宮さんっ!!」
思わず大きくなった私の声と
「おかえりなさい、一彰さん。早かったのね。」
そう言って立ち上がった千紗子さんとは、ほぼ同時だった。
「ただいま、千紗子。宮野さん、いらっしゃい。」
「おじゃまして、」
挨拶をしようと立ち上がってそこまで口にしたところで、固まった。
千紗子さんの腰を流れるように抱き寄せた雨宮さんが、彼女の唇に羽のような口づけを落とすのを目撃してしまったのだ。
(なっ、なちゅらる~~っ!!)
あまりにも自然で無駄のない慣れきった動きに、彼らにとっての『当たり前』を見せつけられる。
私は口を開けたまま、頬を熱くした。
「あっ、大きい犬がいる。宮野さんちの犬?」
「えっ、あっ、は、はいっ!」
反射的に答えるけれど、まだ脳内はフリーズしたままだ。
「瀧沢さんのお宅で飼っているわんちゃんで、アンジュちゃんっていうのよ。とってもお利口さんでね、下のソレイユの前で待ってるところをナンパしちゃったの。」
「ナンパって…ちぃ、ちょっと妬けるな。」
「ふふっ。そしたら杏ちゃんがソレイユから出てきて、杏ちゃんちの子だって分かったの。だから二人まとめてお招きしちゃったわ。」
楽しげな千紗子さんの話を雨宮さんが嬉しそうにニコニコと聞いている。
その間もまだ彼女の腰に手は添えられたままだ。
(ここに私も居るんですよ~~。)
心の中で呼びかけてみるけでど、仲良しの二人には届かない。
(雨宮さんも帰ってこられたことだし、そろそろお暇しなきゃね。)
大人の恋愛はまだまだ初心者の私には、先輩夫婦の仲良しぶりを見続ける余裕はなくて、二人から視線を逸らすと、カップに残っていた紅茶を一気に飲み干した。