*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!

 「あの、私、そろそろ…」

 「それで?宮野さんは何に悩んでるんだ?仕事のこと?プライベート?」

 「えっ!!」

 『帰ります』と言うはずだった口から、驚きの声が出る。

 「話しの腰を折ってしまってすまないな。俺なら書斎で用事を片付けてくるから、気にせず続きをどうぞ。」

 柔らかく目を細めてそう言った雨宮さんに、思わず目が釘付けになった。

 図書館でたまに見ることのある‟雨宮館長”は、かっちりと体にフィットした三つ揃えのスーツに、シルバーフレームの眼鏡、きっちりとサイドに流しされた髪型で、いわゆる『仕事の出来る大人の男』というスタイルだ。
 そのスタイルと同じように、彼の雰囲気もかっちりしたもので、仕事以外のことで気安く声を掛けられるような感じではない。

 けれど、今。

 彼が身に着けているのは、Vネックの白いTシャツの上にグレーのロングカーディガンを羽織っていて、下は黒のスキニ―デニム、と至ってシンプルだけど、モデル並みの体型を持った彼が着るととても素敵に見える。
 かけている眼鏡もブラウンの太めのプラスチックフレームだし、髪の毛も無造作に下されていて、仕事の時とは全然違う。

 それだけではなく、千紗子さんと一緒にいるせいか彼が持つ空気すら柔らかくて、改めてそんな雨宮さんに驚いてしまった。

 当たり前だけどここは彼の自宅で、完全なるプライベートなのだということに、今更ながらに気が付いた。
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