*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
村上さんや社長の背中を見送っていると、頭のてっぺんにチクチクと何かが刺さるみたいな感じがする。
(コケた時にヘアピンがずれたのかな…)
つむじの辺りを触ってみるけど何もない。
気のせいか―――そう思って下ろそうとした手を、ギュッと掴まれた。
「ほわっ、」
掴まれた方に顔を向けると、修平さんが私をじっと見ていた。
「杏奈」
じっと、本当にじーーーっと、穴が開くんじゃないかと思うほど真剣な双眸に見つめられる。
「え、っと……」
黙って、というか半ば嘘を着いたような形でここにやって来てしまった、その後ろめたさは健在だ。
更にその上、大失敗の尻拭いを修平さんにさせてしまったのだ。
(怒ってるよね……)
申し訳なさと後ろめたさで、修平さんの視線から無意識に逃げてしまう。
視線をあちこちに彷徨わせながら、それでも何とか口を開く。
「修平さん…その、色々と…」
俯きかげんの顔から、ちらりと瞳だけで彼を見上げると、
「杏奈、ちょっといい?」
修平さんはそれだけ言うと、いきなり私の体を抱え上げた。
「ひゃっ!え、えぇっ!」
「いい?」なんて聞いておきながら、私の答えなんか求めていないらしい。
公衆の面前での"お姫様抱っこ”に、周りのお客さんがざわりと波立つ。
一瞬の出来事に呆気にとられたけれど、周囲の女性たちからの悲鳴に似た声に、ハッと我に返った。
「おっ、降ろして!歩けるから!」
燃えるように真っ赤になった顔でそう叫ぶと、
「杏奈は黙ってて。」
ピシャリと、言われ口を噤む。
―――やっぱり彼は怒っているらしい。