*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!



 村上さんや社長の背中を見送っていると、頭のてっぺんにチクチクと何かが刺さるみたいな感じがする。

 (コケた時にヘアピンがずれたのかな…)

 つむじの辺りを触ってみるけど何もない。

 気のせいか―――そう思って下ろそうとした手を、ギュッと掴まれた。

 「ほわっ、」

 掴まれた方に顔を向けると、修平さんが私をじっと見ていた。

 「杏奈」

 じっと、本当にじーーーっと、穴が開くんじゃないかと思うほど真剣な双眸に見つめられる。

 「え、っと……」

 黙って、というか半ば嘘を着いたような形でここにやって来てしまった、その後ろめたさは健在だ。
 更にその上、大失敗の尻拭いを修平さんにさせてしまったのだ。

 (怒ってるよね……)

 申し訳なさと後ろめたさで、修平さんの視線から無意識に逃げてしまう。

 視線をあちこちに彷徨わせながら、それでも何とか口を開く。

 「修平さん…その、色々と…」

 俯きかげんの顔から、ちらりと瞳だけで彼を見上げると、

 「杏奈、ちょっといい?」

 修平さんはそれだけ言うと、いきなり私の体を抱え上げた。

 「ひゃっ!え、えぇっ!」

 「いい?」なんて聞いておきながら、私の答えなんか求めていないらしい。
 公衆の面前での"お姫様抱っこ”に、周りのお客さんがざわりと波立つ。

 一瞬の出来事に呆気にとられたけれど、周囲の女性たちからの悲鳴に似た声に、ハッと我に返った。

 「おっ、降ろして!歩けるから!」

 燃えるように真っ赤になった顔でそう叫ぶと、

 「杏奈は黙ってて。」

 ピシャリと、言われ口を噤む。




 ―――やっぱり彼は怒っているらしい。









< 199 / 259 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop