*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
「杏奈、早くこっちにおいで。」
部屋についたウッドデッキの先から修平さんが呼ぶ。
のろのろと帯を解いて浴衣をそっと脱ぐと、体にバスタオルを巻き付けそっと足をウッドデッキへと踏み出した。
「ほら早く。体が冷えちゃうだろ?」
総ヒノキで作られた露天風呂の横にまで行くと、私に背を向けたままの修平さんから声を掛けられ
「う…うん。」
なんとか返事をして、おずおずと風呂に足を踏み入れた。
足先からじわりと温もりが染み込んでくる。自分でも気が付かないうちにエアコンで足先が冷えていたみたいだ。
「入った?」
「うん…」
最初に約束した通り、修平さんは私に背を向けたままだ。
約三十分ほど前。
美味しい料理に舌鼓を打ち、もうこれ以上は食べられない、と言うほど満腹になった私と、ゆっくりとお酒を楽しむ修平さんはウッドデッキのチェアでのんびりとくつろいでいた。
ゆったりと会話をしながら、水盤の向こうでライトアップされた日本庭園を眺める。
「きれいね」「風が気持ちいいね」
そんな会話をのんびりと交わしているうちに、急な眠気に襲われた。
修平さんの言葉を少しずつ遠くなる。
前日の疲れが温泉とご馳走で満たされた体は、本能に抗えそうにない。
それでもこのまま眠ってしまうのがもったいなくて、何とか返事だけは返していた。
だから「あとで一緒に入ろうね。」という言葉に、何も考えずに「うん」と相槌をしたのだ。
すぐに自分の過ちに気付くが、後の祭り。一気に眠気が飛んでいった。
完全に油断していた、としか言いようがない。