*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
(修平さんは、私がまだ怒っていると思ってるのかも…)
せめてそのことだけでも否定しなければ、修平さんにずっとこんな風に申し訳なさそうな顔をさせてしまう、と思った私は、意を決して彼を見上げた。
「修平さん…」
「なに?杏奈。」
「あのね、わたし…」
続きを言いかけた所で、ソファーの脇からこげ茶色の鼻がズイッと私の脇に突っ込んできた。
「「アンジュっ!」」
私と修平さんの声が重なった。
二人の目線の先には、もう一人(匹)の同居人(犬)である、フラットコーテットレトリバーのメス、アンジュがいた。
「アンジュ、今日はお散歩に連れてってあげられなくてごめんね。」
彼女の鼻先を撫でながら謝ると、アンジュは私の頬をペロリと一舐めして尻尾を大きく振る。
「今日は来客が来るから夕方の散歩もお預けになるけど、また明日たっぷり遊んでやるから大丈夫。な、アンジュ?」
修平さんがそう言ってアンジュを撫でると、それまで振っていた尻尾が更に勢いよく振られる。
修平さんとアンジュは、いつもお互いが言っていることをお互いに理解しあえる素敵なパートナーだ。
(アンジュがちょっとうらやましいな……。)
同居人における相互理解に於いて、この二人から格段に後れを取っている私としては、修平さんとアンジュの関係が眩しくもあり、羨ましくもある。
まだ修平さんと知り合って間もないし、恋人になってからはごくわずかしか経っていないから、アンジュと比べること自体が間違いだとは思うのだけど、かと言って割り切れるほど経験を積んでいない自分が哀しい。
彼らを見ながらそんなことを考えてぼんやりしてると、
「しばらくここでのんびりしてて、杏奈。」
私の頭を優しくポンポンと二度叩いてから、修平さんがキッチンの方へ戻っていく。
私の足元では、アンジュが腰を落としてくつろぎ体勢を取っている。
トレーの上の紅茶のカップを手に取ると、まだ紅茶が湯気を立てている。
カップに口を付けて一口飲むと、ハチミツの甘さが喉を優しく癒してくれる。
思わずほうっと息を吐いた。