*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!


_____________________________

 オーブンレンジの中で焼かれているグラタンを横目に、揚げ物の準備を整える。
 
 『熱いものは熱いうちに』がおもてなしの基本だと、飲み物や料理をプロとして提供する父に、叩き込まれて育ったので、揚げ物は来客が到着してから揚げることに決めていた。

 揚げ物をいつでも始められるよう準備してから、テーブルのセッティングの最終チェックをしようと、キッチンからダイニングテーブルに回り込もうとした、その時。

 真後ろにあるドアが、ガチャリと音を立てた。

 とっさに、お客様をお出迎えした修平さんが戻って来たのだと思った。

 「しゅうへ、っ!!」

 振り返りながら、彼の名を呼ぶ声ごと息を飲みこんだ。

 ドアの間から体を出したのは、見上げるほど背が高く、がっしりとした体つきの『熊』みたいな男性だった。
 
 この家は、背の高い修平さんが設計しただけあって、天井も高いし、併せてドアも高めのものが付いている。
 でも、目の前の彼はそのドアを、少し頭をかがませて入って来たことで、 きっと190㎝以上あるだろうと推測される。

 そんな大きな男性がすぐ目の前から私のことを見下ろしている。

 息を吸い込んで上を向いたまま、頭が真っ白になって固まって動けない。

 首を大きく伸ばして頭を後ろに倒さないといけないほど、大きなその人の目は、少し垂れ気味で切れ長だけど、黒目の部分が大きくて、何かを言いたげに私のことをジッと見つめている。

 私は何かを言わなければならないと頭では分かっているのに、口を開けたまま言葉を発することができない。

 「折角の休日にお邪魔しちゃってごめんなさい。」

 目の前の大きな男性の脇から、透き通るような大人の女性の声がして、私はずっと上を向いていた首をゆっくりとそちらに向ける。

 「あ、」

 男性の後ろから、ヒョコッと顔を出しているのは、数度顔を合わせたことのある『葵さん』だった。
< 29 / 259 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop