*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
 「もちろんよ。」
 
 遥香さんがそう言うと、修平さんはソムリエナイフをワインの口に当てた。

 「この前二人から貰った赤ワインも美味かったよ。ありがとな。」
 
 慣れた手つきでワインを開けている修平さんに、私は聞き直した。

 「この前の赤ワインって、お誕生日の時の?」

 「ああ、葵が家まで持ってきてくれたやつ。あれはケンと葵からのプレゼントだったんだよ。」

 「あのワイン、飲みやすくてとっても美味しかったです。」

 「杏ちゃんに喜んでもらえて良かったわ。」

 そう言った遥香さんが突然クスクスと、何かを思い出したかのように笑い出した。

 「遥香さん?」

 「ふふっ、修平くんが足を怪我して出勤した時の周りの反応を思い出してね。」

 「葵…」

 「『ギャップ王子』なんて言われてるけど、決して職場で嫌われてるとかじゃなくて、むしろ『近寄り難いけど近寄りたい』みたいな、みんなの気持ちが表れているのよね。」

 「俺は別に、仕事以外で近寄って欲しいとは思ってないから。」

 あっさりとそう言い放つ修平さんに、遥香さんは「分かってるからみんな近寄れないのよ。」と笑う。
 そして、言葉を続けた。

 「その『ギャップ王子』の負傷でしょ!?もう、『我こそは』って数多の名乗りが凄かったのよね。」

 「そ、そうだったんですか…。」

 きっとあの時、私が彼のお世話を名乗り出なかったとしても、修平さんは何も困らなかったのかも、と思うと少し寂しくなってしまう。

 怪我が治った今だって、私と一緒に暮らしているけれど、私は居ても居なくても、彼が困ることなんてないのだろうと、改めて感じる。
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