*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
‟カチャリ”
ドアを開けると、私の鼻先をいい香りがくすぐった。
「おはようございます。具合はどうですか?杏奈さん。」
「佐倉さんっ!!」
キッチンから私に声を掛けたのは、割烹着姿の佐倉さんだった。
佐倉志津子(さくらしづこ)さんは、この家に週二回来ているハウスキーパーさんだ。
自身が立ち上げたハウスキーピング会社『ホームアシスト サクラ』の代表である佐倉さんは、会社を設立する前は、瀧沢家の家政婦として働いていたらしい。その時の恩義があるのか、社長として会社を取り仕切る今でも、こうして佐倉さん自ら瀧沢家のハウスキーピングに来ている。
私がこの家に来たばかりの頃、彼女に家事のノウハウを教えて欲しいと頼んだのがきっかけで、私の休みと佐倉さんが来る日が合えば、料理や掃除を彼女に教えて貰っている。
時々家事の傍ら、亡くなった修平さんのお祖母様の話しや、子どもの時の修平さんの話を佐倉さんが話してくれて、私はそれをいつも楽しみにしているのだ。
「お久しぶりですね。体調を崩されたと、瀧沢様から聞いていますよ。食欲はありますか?食べられそうなら、何か作りますよ。」
彼女の温かな声に、私の顔がふにゃりと崩れて、みるみるうちに両目に涙が盛り上がっていく。
「さくらさ~んっ」
半泣きで飛びついてきた私のことを受け止めた佐倉さんは、「あらあら」と言いながら背中をトントンと叩いた。