*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!


 ダイニングテーブルの上に置かれたティカップからは、リンゴの香りに良く似たハーブの香りが湯気と共に立ち上っている。

 いきなり泣きついて来た私のことを、しばらくの間何も聞かず黙って受け止めてくれた佐倉さんは、私の涙が止まるのを見計らって、このハーブティを入れてくれた。

 「お…おい゛ぢい」

 言いたかった言葉を鼻を啜りながら口にしてしまったので、きっと聞き取りづらかっただろうけど、佐倉さんは『それは良かったです』と微笑んでくれた。

 「体調は大丈夫ですか?」

 「……はい」

 ダイニングテーブルの向かいに座る佐倉さんが、心配そうに私の顔色を見ている。
 本当に訊きたいことは別にあるだろうに、まず最初に体調のことを尋ねる彼女の優しさが身に沁みた。 

 「修平さんと喧嘩でもしましたか?」

 「ど、どうしてそれをっ……」

 びっくりした拍子に手に持っていたカップが揺れ、中のハーブティが少しだけこぼれる。
 幸い手には掛からなかったけれど、そんなことを気にする余裕もなく、佐倉さんを凝視する。

 「ふふっ、そりゃ聞かなくても分かりますよ。こちらに何年、いえ何十年お伺いしてると思ってるんですか?」

 「えっと……」

 「朝一番に修平さんからお電話を頂いて、杏奈さんが体調を崩されているから、と窺った時にピンと来ました。」

 「えっ!そんな時から!?」

 「はい。杏奈さんのことを話す修平坊ちゃんの声が、いつもより随分と情けなさそうでしたからね。」

 そう言って「ふふっ」と小さく笑う佐倉さんに、私は思わず目を丸くした。

 「情けなさそうって……」

 (怒ってたんじゃないのかな、修平さん……)

 最後に見たひどく寂しげな顔が、頭を過ぎる。
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