クールな御曹司の甘すぎる独占愛

◇◇◇

奈々は震える手でマンションの自室のドアに鍵を差し込む。その後ろには、水瀬が控えていた。

水瀬の作成した販売管理シートを説明するには、奈々が普段使っているノートパソコンがいいだろうとなったが、当然ながらそのパソコンは奈々の自宅に置き去り。水瀬のパソコンで説明して、いったんUSBメモリを預からせてもらい奈々のパソコンに落としてから返す手もあったが、水瀬はそのUSBを明日使いたいとのこと。

そうなると残す手段はひとつ。奈々の部屋に来てもらうしかなかった。

そう決まってからの奈々の頭の中は、部屋の状況確認でいっぱい。

洗濯物は取り込んだままになっていない? お茶碗やコーヒーカップは、きちんと洗ってある? テーブルの上に物が散乱したりしてない?

朝出たときの状況をひとつひとつ思い起こしては潰していく。そうして、ひとまず大丈夫だろうとの結論に落ち着き、ゆっくりと鍵を回した。

一DKの間取りは、ベッドルームのドアが開いていれば、玄関からほぼすべてが見通せる。奈々は先に一歩入り、ベッドルームのドアが閉まっているのを横目で確かめてホッとする。水瀬を「どうぞ」と中へ案内し、あがってもらった。

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