クールな御曹司の甘すぎる独占愛
気を取り直してパソコンバッグに入れっぱなしだったノートパソコンを出して奈々がテーブルの上に開くと、水瀬もソファからラグマットの上に移動し、ブリーフケースからUSBメモリを取り出した。
「それじゃ早速始めよう」
水瀬から受け取ったUSBメモリから指示されたデータを読み込む。ファイルを開くと、エクセル画面には原価の求め方から始まり、損益分岐点などが記載されていた。
水瀬は隣から奈々のパソコンを覗き込む。
「この前、奈々から見せてもらった光風堂の経営関連の数字では、これだけ売れて経費がこれだけかかっているから、利益はいくらになるという大雑把なものだったんだけど、それをもっと細分化して管理したほうがいいと思うんだ。製品別の原価計算をして、それが単体でどれだけ儲かっているのか、とかね」
「それは確かに気になっていました。でも、どこをどうしたらいいのかわからなくて」
「そうだよね。これまで経営数値に関わってこなかったんだから当然だ。まずは……」
水瀬は自分で作成したシートの説明をし始めた。
製品原価が材料費と加工費の足し算で求められると知っていた奈々だが、赤黒トントンになる損益分岐点がわかる原価計算の方法は目からうろこだった。