クールな御曹司の甘すぎる独占愛

材料費や製作する人の人件費が和菓子に必要になるのはわかるが、サービススタッフの人件費や広告宣伝費、その他いっさいの費用は、和菓子を作るときの費用ではないと考えていたのだ。

ところが水瀬のやり方は、材料費にかかわるすべての費用を含めて原価計算する。材料費などの直接費以外の費用をまかなっているのは製品ひとつひとつだからだそうだ。
そうすることで、本当に黒字になる価格がいくらなのかわかるものだった。

逆に、製造にかかる費用だけを見て原価計算をすると、間接的な費用を製品一個がどのくらいカバーしなければいけないかがわからないため、経営判断が難しくなると。

水瀬はそのあとも、従業員の年間総労働時間や加工時間などを使い、次々とシートの説明をしていった。


「そろそろコーヒーも冷めたかな」


水瀬がそっと口をつけて、直後にふわっと微笑む。


「うん。うまい」
「冷めましたか?」
「ちょうどいい」


それを聞いた奈々も飲んでみたが、冷めているというよりは、冷めきっているコーヒーだった。これではホットコーヒーとは呼べない。

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