クールな御曹司の甘すぎる独占愛

言葉にして明美に言われると、奈々までますます緊張してくる。これで“やっぱりよしておくわ”となったら、紹介してくれた水瀬にも申し訳が立たない。“光風堂は俺が手を出すほどの店じゃなかった”と彼を落胆させたくはない。

奈々は和菓子を取る手がかすかに震えるのを感じた。

今ショーケースに並んでいる全種類をひとつずつ皿にのせ、玉露と一緒に依子のもとへ運ぶ。


「大変お待たせいたしました」
「まぁ、綺麗ね」


依子は目の前に並んだ和菓子を見て両手をそっと合わせた。どれから食べようかしらと悩みながら、枝豆かんを口に運ぶ。

どうだろう。気に入っていただけるかな……。

奈々は胸の前で手を組みながら、不安いっぱいに依子を見つめた。

依子はゆっくりとではあるが、次から次へと皿にのった和菓子を食べていく。

奈々が固唾を飲んで見守る前で落ち着いた様子で食べ終えた依子は口をナフキンで拭い、両手を膝の上に置いて「ごちそうさまでした」と目線を下げた。

良かったのか悪かったのか。どちらなのだろうかと奈々の身体に緊張が走る。

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