クールな御曹司の甘すぎる独占愛
たまにカタツムリが紛れ込んでいて、廊下を這う姿に驚いた思い出もある。
そのあじさいかんを今夜、奈々は水瀬へ届けるつもりだ。
閉店を迎え、急いで店を出る。
昨日の水瀬からのメールによると、今日の午前中に九州への出張から帰っているはず。出張の報告もあるから今夜は少しだけ残業になりそうだと言っていた。
水瀬には新作が完成したとはまだ伝えていない。突然渡して驚かせようと、奈々はこっそり企んでいた。
ネクサス・コンサルティングまでは歩いて十分。箱詰めにした和菓子と一緒に自分の気持ちを伝えようと心に決めているため、一歩進むごとに緊張の階段を上っている気がする。
何度となく深呼吸をしてはそれをやり過ごし、いよいよビルの前に到着。
気持ちを落ち着かせるために、最後に大きく息を吸って吐く。そして、バッグから取り出したスマホで水瀬にメールを送った。
《お渡ししたいものがあるので、会社の前で仕事が終わるのを待っています》
多少待つのは覚悟のうえ。奈々はビルの前にあるベンチに腰を下ろした。