クールな御曹司の甘すぎる独占愛
「そうなんです。あの、柳さん、お帰りになるところ申し訳ないのですが、これを水瀬さんのデスクに届けていただけないでしょうか……?」
「水瀬さんに? わかりました。奈々さんのお願いなら聞かないわけにはいきません。僕が責任をもってお届けしますよ」
柳が快く受け取ってくれ、奈々はひとまず安堵した。
「ありがとうございます。どうぞよろしくお願いします」
和菓子を柳に託し、奈々はその場をあとにした。
自宅への道のりを歩きながら、水瀬に《今夜は帰ります》とメールを打つ。
おそらく打ち合わせ中のため、最初のメールもまだ読んでいないのだろう。律儀な水瀬のこと。読めばすぐになにかしらのアクションがあるだろうから。
彼の仕事の邪魔をしなくてよかったと、奈々はつくづく思った。夜空に小さく息を吐き、駅へ足を向ける。
一度大きな決意で水瀬のもとへやってきたからなのか、会うのすら叶わず、脱力感に襲われる。それと同時に、会えなかったからこそ余計に会いたい気持ちが募っていく。電車に揺られながら、頭も心も水瀬でいっぱいだった。
こんなにも水瀬さんを好きになっていたなんて……。