クールな御曹司の甘すぎる独占愛
育ちすぎた想いが奈々を翻弄する。電車に乗り、水瀬からは遠く離れていくのに、心はすっかり囚われていた。
こんなふうに強く誰かを想うのは初めてのような気がする。奈々だって、小学生の頃から恋は知っている。片想いが大半で、恋愛経験となるとたったの一度だけれど。
だが、そのどれもが、もっと淡くて移り気だった。ところが水瀬に関しては、一分一秒刻みに好きな気持ちが増えていく。自分でも抑えが効かないほどに。
そのまま帰る気になれず、降車駅のそばにある本屋に立ち寄る。
特に目当ての本があるわけではない。店内をブラブラして、ファッション誌を手に取ってはペラペラとページをめくり、また戻すの繰り返し。目にはいろんなものを映すのに、まったく頭に入ってこない。
水瀬さんに会いたい。
頭にはそれしかなかった。やはりあのまま会社で待っていればよかった。ほんの数分でもいい。顔を見て、この気持ちを伝えたかった。
そう悔やんでも今さら遅い。もう帰るとメールを送ってあるのだから、仕事を終えれば水瀬もそのまま帰るだろう。これから会社に行ったって、すれ違うだけ。
一時間ほど時間を潰しただろうか。結局なにも買わずに書店を出た奈々は、今度こそ自宅に足を向けてゆっくりと歩きだした。