クールな御曹司の甘すぎる独占愛
「いただきます」
菓子楊枝を使い、水瀬はひと思いに菓子を頬張る。
奈々は固唾を飲んで見守りながら、遠い昔を思い出した。
あれは奈々が小学五年生の頃。初めてひとりで作ったどら焼きを父親に食べてもらうとき。どんな感想が口から飛び出るか、子供ながらに緊張したのをよく覚えている。
ひと口食べた父は《奈々は立派な和菓子職人になれるぞ》と太鼓判を押してくれた。
それはお世辞だったのかもしれないが、そのひと言は奈々が和菓子職人を目指すひとつの大きなきっかけだった。忘れていたそのときの感情が込み上げて、胸がほんのりと熱い。
「……どうですか?」
感想を待っていられず、奈々が尋ねる。
「おいしいよ。ぷるぷるした寒天と中の白あんのバランスが絶妙だ。文句なしにおいしい」
奈々はホッとして深い息を吐いた。
「そんなに緊張した?」