クールな御曹司の甘すぎる独占愛
祖父母の住む家に遊びにいくと、決まってまんじゅうや最中を出されたそうだ。それを摘まみながら、そんな話を聞いたと言う。
「中国からの伝承が始まりと言われています。当時の中国では、まんじゅうに詰める具材といえば肉だったそうで」
「それがどうして甘いあんこになったのか、子供心に不思議で仕方なかったよ」
現代であんこと言えば甘いもの。まんじゅうの中に入っている“餡”が肉だったと言われてピンとこないのは当然だろう。
「中国からやってくる食材の多くは、日本のお坊さんたちが真似して料理をしていたそうです。ただ彼らには肉を食べてはいけない決まりがあって、肉の代わりに畑で採れる小豆をゆでて餡にしたそうです」
「なるほど。そういうわけだったのか」
水瀬が大きくうなずく。
「その餡も最初は塩で調味していたそうですが、やがてツタの樹液を煮詰めた“甘葛(あまづら)”で味付けするようになり、室町時代には砂糖で甘みをつけるようになり、今のあんこに……って、すみません」
初対面の人を相手に長々と語ったことに気づき、奈々がハッと口をつぐむ。