クールな御曹司の甘すぎる独占愛

水瀬がいいタイミングで相槌を打ち、感心してくれるからつい調子に乗ってしまった。


「春川さんは和菓子が本当に好きなようだね。光風堂で働いて長いの?」
「あ、いえ、働くというか……経営しているんです」


自信なくボソボソと答える。オーナーに見えないのは、奈々自身もよくわかっていた。水瀬は奈々を従業員だと思ったのだろう。


「それは失礼なことを言ってごめん」


申し訳なさそうに眉尻を下げる水瀬に、奈々は「大丈夫です」と手をひらひらと振る。そしてもう片方の手でポケットから名刺を取り出し、それをそっと彼へ向けた。


「光風堂の春川奈々です」
「奈々さん、ね」


それを両手で丁寧に受け取り、水瀬がやわらかく微笑む。つくづく素敵な笑顔だと、奈々は密かにドキドキとした。


「セミナーが終わったら光風堂に寄ってみようかな。奈々さんおすすめの桜もちと菜の花もちが無性に食べたくなった」
「本当ですか?」

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