クールな御曹司の甘すぎる独占愛
十センチ四方のバニラアイスの塊を鉄板にのせ、風味づけのためか、そこにラム酒をかけると一気に火の手が上がる。熱い鉄板の上なのに、アイスクリームは意外と溶けずに残っている。
それを皿に移し替え、今度は鉄板に溶けて残ったアイスクリームにオレンジピールを練り込んでいく。おそらくソース作りだろう。クリーム色に変わったソースを皿のアイスクリームに華麗な手さばきでかけた。そこにレモンを添えて完成だ。
アイスを鉄板で焼く思いがけないデザートを前にして、奈々は情けなく口を半開きにしていた。
「食べてみて」
水瀬に促され、スプーンですくい口へ運ぶ。
適度にやわらかくなったバニラアイスはとろっとして、舌触りがとてもいい。ラム酒とオレンジの風味が鼻からふわっと抜けていった。
「……おいしい」
ここでも奈々の口から出るのは、そのワード。水瀬は単純明快な奈々の感想に軽く笑みを漏らした。
「鉄板焼きアイスクリームが、奈々の創作のヒントになればいいと思ってね」