クールな御曹司の甘すぎる独占愛

水瀬は和菓子職人としての奈々のためにここへ連れてきてくれたのだ。意外性のあるデザートが、奈々の創作意欲を刺激するのを願って。

水瀬の思わぬ粋な計らいが、奈々の心を大きく揺さぶった。


「ありがとうございます。なにからなにまで、水瀬さんには本当によくしていただいて……」


奈々は、デートだと思って浮かれていた自分が恥ずかしい。

鉄板焼きのアイスクリームという珍しいデザートを前にしても、水瀬が“創作のヒント”との言葉をくれなければ、和菓子に意識を向けられなかっただろう。

常に新たな発見を探して、仕事に結びつける。それでこそプロなのだと、水瀬に教えられた気がした。


「下心があるってことは忘れないで」


感動している奈々の耳もとに水瀬の息がかかる。


「夜はまだ始まったばかりだからね」


ドキッとする言葉を囁かれ反射的に水瀬を見ると、いつもの優しい瞳が妖しく細められた。

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