クールな御曹司の甘すぎる独占愛
水瀬はそう言ってクスッと笑った。
そういえば会社に忘れ物をしたと、慌てて店を飛び出して行ったっけ
ついさっきの柳の様子を思い返し、奈々も微笑む。
「作り直さなくてもよろしいんですか?」
「もちろん。こっちもおいしいに違いないからね」
「ありがとうございます」
奈々が軽く頭を下げたときだった。勢いよく控え室のドアが開け放たれたかと思えば、そこから柳が飛び込む勢いで中へ入ってきた。
まだ三十分と経っていない。会社はホテルから近いようだ。
「ただいま戻りました!」
書類の入っていそうな封筒を胸に抱え、奈々に気づいてハッとする。
「サンドを運んでいただいてありがとうございました」
「いえ、こちらこそありがとうございました」
奈々が下げた頭に反応して柳も深く頭を下げる。すると抱えていた封筒が逆さになり、中から書類がパラパラとフロアに散らばった。
「わわ!」
慌てて拾い始めた柳。奈々も自分の足もとまでひらりと舞った書類を拾い上げ、柳に手渡した。そして、水瀬と《ね?』と顔を見合わせる。
そこに“ほら、そそっかしいだろう?”という隠された言葉に気づき、クスッと笑い合った。