クールな御曹司の甘すぎる独占愛

ふたりの視線が一斉に向けられ、奈々が半歩後ずさる。水瀬の眼差しが興味津々に見えたから余計だ。


「そうなんです」
「和菓子と言ったら日本茶のイメージだね」
「そうですよね。私も驚いたのですが、フードペアリングをご存じですか?」


奈々が問いかけると、「知りません」と答える柳の向かいで、水瀬は「フランスでは“マリアージュ”と呼ばれている伝統的な考え方だよね?」と確認の意味も込めて奈々を見つめる。

まさに水瀬の言うとおり。フードペアリングとは、合わせて食べるとよりおいしさが増すような食べ物・飲み物の組み合わせのことだ。
奈々は「はい」とうなずきながら続けた。


「味覚センサーを導入して、甘味、塩味などの基本味を指標に味を数値化して、そこでの獲得ポイントが八十五ポイントを超えると相性が良いんです。例えば相性がばっちりと言われる赤ワインと牛肉は九十四ポイントとかなりの高さだったのですが、コーヒーとさまざまな和菓子の相性を調べると平均スコアは九十三ポイントとかなりの好成績だったそうです。中でもコーヒーとどらやきは九十五ポイント以上で」


そこまで語り、奈々はまばたきを繰り返してふたりを交互に見やる。一度ならず二度までも水瀬の前でうんちくを披露したことに気づいた。

< 23 / 322 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop