クールな御曹司の甘すぎる独占愛
「ごめんなさい、私ときたら……」
恥ずかしさに首をすぼめて小さくなる。
「いや、奈々さんの話は非常に興味深いよ。あんこの歴史だって、初めて聞いた話だったし」
「そうですよ。とてもおもしろかったです。でも、水瀬さんはあんこの歴史も聞いたんですか? ずるいですよ」
本気とも冗談ともとれない口調で柳が水瀬に口を尖らせる。柳も人をのせるのが上手らしい。
「……すみません、ありがとうございます」
普通だったら引かれてもおかしくはないのに、ふたりともなんて優しいのだろうか。事実、友人には《奈々の語り癖がまた始まった』と言われることがたまにある。
これからは少し気をつけなくちゃ……。
水瀬と柳に気を遣わせて申し訳なく思いながら、奈々は「では、少々お待ちくださいませ」とテーブルを離れた。
「ちょっと奈々さん!」
すかさず明美が奈々の腕を掴んで、ショーケースの奥へ引っ張る。その勢いがあまりにも強くて、奈々は足をよろけさせた。