クールな御曹司の甘すぎる独占愛
◇◇◇
翌朝、いったん自宅マンションで着替えてから店へ出向いた奈々は、駅から光風堂までの道を歩いていた。
真弓には《ちゃんと話したほうがいいよ》と何度も念を押されたが、未だにその勇気は出てこない。気を紛らわそうと新作和菓子の構想を練ろうと試みても、なにひとつ浮かばなかった。
重い足取りでホテル・エステラ付近までくると、路肩に見知った白いセダンが止まっていると気づく。
……え? まさか晶さん……?
鼓動がドクンと弾む。おそるおそるその車に近づき運転席をそっと覗いてみると、眠っているのか、椅子にもたれている晶の姿があった。
いつからここにいたの?
よく見てみれば、昨夜、花いかだで鉢合わせしたときと同じネクタイだった。
声をかけるべきか否か、奈々がその場で迷っていると、不意に開かれた晶の瞳が奈々を捕らえて大きくなる。
奈々があっと思ったときには運転席のドアが開き、晶が弾かれたように降りてきた。
「今までどこにいたんだ」