クールな御曹司の甘すぎる独占愛

奈々まで切なくなる声だった。晶に抱き寄せられ、その腕に包まれる。周りの目も気にしていないようだ。


「……晶さん、いつからここに?」
「昨夜から。自宅マンションにはいないし、連絡を断たれたら、ここで待つしかないだろ」


ひと晩ここで待っていてくれたとは思いもしなかった。そんなことをさせてしまい、奈々の胸がキュッと痛む。だが不思議と晶の顔を見た途端、ついさっきまで落ちていた奈々の気持ちがスーッと晴れていくのを感じた。

ミヤビとのことは、奈々の早とちりだったと思っていいのかもしれない。真弓が言っていたように、彼女に無理やり誘われて仕方なく花いかだで待ち合わせたのかも。

ひと晩ここで奈々を待つほどの愛を見せつけられ、涙が溢れそうになる。


「電池が切れちゃったんです。ごめんなさい……」


故意に連絡を断ったわけではない。ただ、真弓に充電器を借りるのを拒否したのは事実だが。昨夜の精神状態では、晶と冷静に話せなかっただろう。


「誤解させて悪かった。ミヤビはあの場ですぐに帰したから」

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