クールな御曹司の甘すぎる独占愛
奈々から見えなくても、晶が膝の上で拳を震わせているのがわかった。彼の肩が小刻みに揺れている。
「ふざけてなんかないさ。大まじめな話。水瀬には悪いが、奈々は俺がもらう」
「言っている意味がわからない」
晶は大きく首を横に振りながら、眉間にシワを寄せた。
「晶さん、本当にごめんなさい」
奈々は唇が震えてどうしようもなかった。でも、ここで引き返すわけにはいかない。両手をギュッと強く握り、気持ちを確かにもつ。そうでもしなければ、“本当は違うの”と言ってしまいそうだった。
「……晶さんにはいろいろとよくしていただいたのに、こんな形で裏切って……」
言葉が続かない。もう晶の顔も見られなかった。胸が押しつぶされ、呼吸もまともにできない。
「……ごめんなさい。私まだ仕事が残っていて。……晶さん、お忙しいのにお時間を取ってくださり、ありがとうございました。失礼します」