クールな御曹司の甘すぎる独占愛
一瞬驚いたが、和菓子に興味をもってもえたように見えて奈々は嬉しい。
「おいおい、店のものを破壊するな」
水瀬が肩を掴んで、柳の体勢をそっと立て直す。柳は「すみません」と頭を掻き掻き恐縮した。とても愛嬌のある人だ。
「ここに並んでいる和菓子はどうするの?」
水瀬の視線がふとショーケースへ向く。
「そちらは廃棄となります」
閉店時間は過ぎている。ショーケース内に並ぶ和菓子の消費期限は二十四時間。明日の開店時にはもう食べられない。
「冷蔵庫で保管してもダメなの?」
水瀬の眉がハの字になる。
「和菓子は冷蔵保存には向かないんです。和菓子の多くはでんぷん系の材料を使っているので、冷蔵すると固くなって戻らないのです。炊いたごはんを冷蔵庫で保存したらカチカチになるのと同じです」