クールな御曹司の甘すぎる独占愛

「まずは、奈々さんのABP掲載を祝して乾杯」


宮内の声に明美も「乾杯」と続き、グラスを持ち上げる。


「ありがとうございます。宮内さんもお忙しいのにお時間を作ってくださり、ありがとうございました」
「いや、ほんと忙しいと言ったらないよ」


近々、衆議院議員の解散総選挙が行われる予定になっている。宮内が仕える小田隆弘も出馬するため、本来はこんなふうにして奈々のお祝いをしている場合ではないだろう。

解散よりも奈々たちとの食事が先約だったため、どうにかこうにか数時間だけ自由時間をもらってきたらしい。やはり律儀な性格だ。


「そういえば奈々さん、ミヤビが結婚するらしいですよ」
「そうなの?」


先付のごま豆腐を飲み込んでから、奈々が目を丸くする。

二年前に来日したときに撮影した映画のヒーロー役の男性と恋に落ち、結婚に至ったと情報通の明美が言う。撮影終了時には恋に発展しなかったものの、試写会で再会したときに意気投合したらしい。そのヒーローこそ、真弓が憧れていたジャック・スペクターだ。

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