クールな御曹司の甘すぎる独占愛

真弓が知ったら、さぞかし悲しむだろうと心配になる。

ちなみに余談だが、奈々の同期だった佐野は職場の後輩と一年前に結婚。もう間もなく第一子が生まれる予定だ。


「奈々さんが今すぐ結婚したいっていうなら、俺が相手になってやってもいいけど」
「なに言ってるんですか。奈々さんには水瀬さんがいるんですから無理です」


冗談めかして言った宮内に、明美が大まじめに突っ込みを入れる。


「なら、明美ちゃんはどうだ?」
「私だっていやですよーだ」
「奈々さん、明美ちゃんの俺への当たりの強さをなんとかしてくれない?」


ふたりのやり取りをクスクスしながら奈々が見守る。

楽しい時間はあっという間に過ぎ、海の幸をふんだんに使った懐石料理も食べ終えた。会計を済ませた宮内がトイレへ行くと、明美は「私も」とあとを追っていき、奈々は個室にひとりきりとなった。

ふたりがいなくなり部屋が静かになると、波の音がよく聞こえることに気づく。少し風が出てきたのか、窓から見える海には白波が立っている。

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