クールな御曹司の甘すぎる独占愛

それをテーブル席からぼんやりと眺めて過ごしているうちに十分が過ぎた。


「ふたりともどうしたんだろう」


様子を見に行ってみようかと奈々が席を立ったとき。ドアから依子が顔を覗かせた。


「奈々さん、ふたりは海に行ったわよ」
「え? 海ですか?」


とっさに窓から浜辺に目をやるが、それらしきふたりの姿はここからは見えない。


「店の脇に海へ通じる階段があるから、そこから下りてみるといいわ」


依子に言われるがまま店を出て、木製の階段を下りていく。八十段くらいはあっただろうか。

それにしてもふたりときたら、せめてひと言声をかけてくれればいいのに。

奈々はそんなことを考えながら、広い砂浜を歩いて見渡す。駐車場に立ったときよりも潮の香りが格段に強い。オリーブ色のフレアスカートを風に揺らしながら歩く奈々には、人ひとりの姿も見えない。ふたりはいったいどこへ行ったのか。

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