クールな御曹司の甘すぎる独占愛
不可思議に思いながら波の近くまで歩いてくると、バッグの中のスマホから着信音が聞こえてきた。きっと明美に違いない。
ところが取り出したスマホのモニターに別の名前が表示されていて、軽く鼓動が跳ねる。
「晶さんだ!」
ひとり言の声まで弾んだ。
「奈々です」
《おはよう。いや、そちらはこんにちは、か》
「そうですね、こんにちは」
晶のいるスイスとの時差は、この時期八時間。こちらが午後三時半だから午前八時半、これから出勤だろうか。
ほんの数日前に電話で話したばかりでも、やっと声が聞けた感覚がする。それほど愛しさは募っていた。
《今なにしてる?》
「今日は葉山にオープンした依子さんのオーベルジュに来ているんです。宮内さんと明美ちゃんと一緒だったんですが、はぐれちゃって」
《はぐれた?》
電話の向こうで晶がクスッと笑う。