クールな御曹司の甘すぎる独占愛

◇◇◇

片づけを済ませて明美を送り出すと、店は奈々ひとりとなった。人一倍明るい明美がいなくなると、途端に静けさが光風堂を包み込む。
奈々は窓辺のテーブルでノートパソコンを開いた。画面にはここ数年の光風堂の営業データが映し出される。


「このままだと光風堂が潰れちゃう……」


思わずそう呟いた。
売上を示す棒グラフも純利益を示す棒グラフも、近似曲線はどちらも緩やかに右肩下がりに推移していた。それとは逆に増えているのが、販売管理費と言われる諸経費である。

いったいどうしたらいいんだろう。

和菓子作りは好きだが、子供の頃から算数や数学は苦手な分野。いつか光風堂を継げたらと漠然と考えていたものの、その時がこんなに早く訪れるとは思ってもみなかった。

経営については、あとでじっくりと教わろうとのんびりしていたため、父が急逝したときには手遅れ。カフェの経営手法に関する本から知識を得るしかなかった。

奈々が大きく深いため息を吐いたときだった。店のドアを叩く音が聞こえた気がして、顔を上げ神経を耳に集中させる。すると、数秒後にもう一度ノックする音が耳に届いた。

誰だろう。お客様かな……。

< 38 / 322 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop