クールな御曹司の甘すぎる独占愛
立ち上がり、小走りでドアへと向かう。
するとガラス扉の向こうにいたのは、奈々が二年半だけ勤めていた住宅メーカー『ナカノハウジング』の同期、佐野祐一(さのゆういち)だった。
アップバングの黒髪はいつも丁寧にセットされ、細アーモンド型の目が意思の強さを感じさせるが、ノリが軽くて話していると奈々も気が楽だ。スクエア型の黒縁メガネがトレードマーク。
ナカノハウジングは業界で中堅クラスだが、堅実かつ誠実な家づくりが施主から好評価を得ている。
奈々と一緒に入社した同期は佐野を含めて男子が十名、女子は奈々ひとり。佐野は、同性のいない奈々をよく気遣い声をかけてくれたものだった。
奈々がドアを開けると、佐野が「よっ!」と手を振り愛想のいい笑みを浮かべる。
「久しぶりだね。佐野くんは仕事帰り?」
佐野はブリーフケースを手にしたスーツ姿だった。新入社員研修終了後に配属されてから、彼は営業ひと筋。このまま部長を目指すんだと意気込んでいる。
彼を中に招き入れ、ドアをいったん閉める。
「そ。近くまで来たから、奈々の顔でも見て行こうかと思ってさ」